「人材開発支援助成金で、結局いくら戻ってくるのか」——研修の稟議を通すには、この金額が要ります。

先に答えを書きます。中小企業が事業展開等リスキリング支援コースを使う場合、研修費用(税込)の75%+研修中の賃金として1人1時間あたり1,000円が支給されます。 たとえば税別25万円・10時間の研修を5名で受講すると、助成金の合計は108万1,200円、実質負担は29万3,800円(1人あたり5万8,760円)です。

ただ、この計算を自社に当てはめようとすると、細かい疑問が出てきます。助成率75%とは書いてあるものの、何に対する75%なのかがはっきりしません。

実際、同じ条件で計算しても、研修会社によって提示される助成額が1人あたり約1万9千円違うことがあります。原因は「経費助成を消費税込みで計算するか、税抜で計算するか」の解釈の違いです。厚生労働省の支給要領を読むとどちらが正しいかは明確なのですが、税抜で計算しているシミュレーターも実在します。

この記事では、厚生労働省の支給要領(令和8年8月3日版)の条文にあたって、助成額の計算方法を一つずつ確認します。受講料別の早見表も載せるので、次のような場面で使える状態を目指します。

  • 研修の稟議書に、根拠のある金額を書きたい
  • 研修会社から受け取った見積書の助成額が正しいか検算したい
  • 自社が中小企業に当たるのか確信が持てない

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オフィスの机で、担当者が電卓を使いながら研修費用と助成金の金額を計算している様子。机上には申請書類の束とノートパソコン

なお制度は年度ごとに改正されます。この記事の数字は2026年8月時点のものです。申請前には必ず厚生労働省の人材開発支援助成金ページで最新版をご確認ください。

助成額は「経費助成」と「賃金助成」の2階建て

まず全体像です。人材開発支援助成金でもらえる金額は、次の2つの合計です。

経費助成 = 研修費用(税込) × 助成率(上限あり) 賃金助成 = 研修時間 × 単価 × 受講人数

このうち金額の大半を占めるのが経費助成です。賃金助成は「研修を受けている間も給料を払っているでしょう」という趣旨の上乗せで、金額としては控えめです。

実質的な負担額は、次の式で出ます。

実質負担額 = 研修費用(税込)− 経費助成 − 賃金助成

図にすると、金額の関係はこうなります。

助成額の内訳。研修費用(税込)137万5,000円に対し、経費助成103万1,200円(税込27万5,000円×75%×5名、100円未満切り捨て)と賃金助成5万円が支給され、実質負担額は29万3,800円。経費助成は税込で計算し、上限は1人30万円、賃金助成は所定労働時間内の研修のみが対象

経費助成は「税込」で計算する

ここが最も間違えやすい部分です。結論から言うと、経費助成の計算に使うのは消費税を含んだ金額です。

根拠は支給要領の条文にあります。「0501 支給対象経費」は、次のように始まります。

次のイからヘに定める経費の額。

そして、その「イからヘ」の中身がこうなっています。

記号 支給対象経費
事業内訓練(部外講師の謝金・旅費、施設の借上費、教材費など)
事業外訓練(入学料・受講料・教科書代など)
資格・試験の受験料等
特定職業能力検定
キャリアコンサルティング
消費税

「ヘ 消費税」が、支給対象経費そのものとして挙げられています。つまり消費税は助成の対象に含まれるため、税込金額を基礎に計算します。

これは別の角度からも確認できます。支給要領には「支給の対象とならない経費」を定めた条文(0502)が独立して存在しますが、そこに消費税は一切登場しません。パンフレットでも「その他対象となる経費 ①消費税」と明記されています。

税込か税抜かで、いくら変わるのか

受講料が税別25万円(税込27万5,000円)の研修を例にすると、差はこうなります。

計算方法 経費助成(中小企業75%)
税込で計算(正しい) 27万5,000円 × 75% = 20万6,250円
税抜で計算 25万円 × 75% = 18万7,500円

1人あたり1万8,750円の差です。5名なら約9万4千円、10名なら約18万7千円変わります。研修会社のシミュレーターで試算する場合は、どちらで計算されているか確認する価値があります。

100円未満は切り捨てられる

もう一つ、実額とのズレを生む要素があります。支給申請書の「経費助成の内訳」(様式第6-2号)には、算定額欄に「100円未満は切捨て」と明記されています。

先ほどの例で言えば、20万6,250円ではなく20万6,200円が実際の助成額です。金額としては小さいものの、稟議書に書く数字としては正確なほうがいいでしょう。

助成率・単価・上限の一覧

コースによって条件が変わります。AI研修・DX研修でよく使われる2つのコースを並べます。

事業展開等リスキリング支援コース

新規事業への進出や、社内のDX化・GX化に伴う研修が対象です。助成率が最も高いコースです。

項目 中小企業 大企業
経費助成率 75% 60%
賃金助成(1人1時間) 1,000円 500円
経費助成の上限(10〜100時間未満) 30万円 20万円
経費助成の上限(100〜200時間未満) 40万円 25万円
経費助成の上限(200時間以上) 50万円 30万円

このコースは令和8年度までの時限措置としてパンフレットに明記されています。使うなら今年度が最後という前提で動くのが安全です。

なお、賃金助成の単価を「960円(大企業480円)」と記載しているページを見かけたら、それは過去の数値です。現行は中小1,000円・大企業500円で、支給要領0504の表に記載されています。数年前の記事がそのまま残っているケースが多いので、金額を調べるときは更新日を確認してください。

人材育成支援コース

上記に当てはまらない、職務に関連した一般的な訓練が対象です。

項目 中小企業 大企業
経費助成率 45% 30%
賃金助成(1人1時間) 800円 400円
経費助成の上限(10〜100時間未満) 15万円 10万円

経費助成の上限額はリスキリング支援コースの半分、助成率も75%に対して45%と大きく下がります。同じ研修なら、リスキリング支援コースが使えるかをまず検討するのが金額面では有利になります。なお人材育成支援コースには、研修後に賃金を引き上げた場合などの加算制度があり、条件を満たせば経費助成率は60%まで上がります。

中小企業かどうかの判定——ここで間違える会社が多い

助成率が75%になるか60%になるかは、中小企業に該当するかで決まります。判定基準は業種ごとに違います。

主たる業種 資本金 または 常時雇用する労働者数
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 または 50人以下
サービス業 5,000万円以下 または 100人以下
卸売業 1億円以下 または 100人以下
その他の業種 3億円以下 または 300人以下

ポイント1:「または」なので、片方を満たせば中小企業

資本金と従業員数のどちらか一方が基準内であれば中小企業です。両方を満たす必要はありません。

支給要領(共通要領0502)にはこう書かれています。

「資本金の額又は出資の総額」が0202に定める額を超えている場合は、ロにより常時雇用する労働者の数の確認を行い、…「常時雇用する労働者の数」0202に定める数を超えている場合は、中小企業事業主以外の事業主であると判定する。

つまり、資本金が基準を超えていても、従業員数が基準内なら中小企業のままです。具体例で見ると分かりやすくなります。

会社の例 資本金 従業員数 判定
製造業A社 5億円(基準超) 200人(基準内) 中小企業(従業員数で該当)
製造業B社 1億円(基準内) 400人(基準超) 中小企業(資本金で該当)
製造業C社 5億円(基準超) 400人(基準超) 大企業
IT企業D社 3,000万円(基準内) 150人(基準超) 中小企業(資本金で該当)

大企業と判定されるのは、資本金と従業員数の両方が基準を超えている場合だけです。「資本金が大きいからうちは対象外だろう」と思い込んで申請しないのは、もったいないケースがあります。

ポイント2:IT企業は「サービス業」——基準が厳しくなる

見落とされやすいのがここです。受託開発などの情報サービス業は、日本標準産業分類上「サービス業」に分類されます。つまり資本金5,000万円以下または従業員100人以下という、厳しいほうの基準が適用されます。

「うちは製造業でもないし、その他の業種(3億円以下・300人以下)だろう」と考えていると、判定を間違えます。同様に注意が必要な業種を挙げます。

  • 宿泊業はサービス業(小売業ではありません)
  • 旅行業は「その他の業種」(サービス業ではありません)
  • 広告制作業、学術研究・専門技術サービス業、教育学習支援、医療・福祉もサービス業

ポイント3:資本金を持たない法人は従業員数だけで判定

個人事業主、医療法人、学校法人、社会福祉法人、一般社団法人、協同組合などは資本金の欄がありません。この場合は従業員数のみで判定します。

ポイント4:従業員数は「企業全体・常時雇用」

数えるのは事業所単位ではなく企業全体です。また「常時雇用する労働者」とは、2か月を超えて雇用され、かつ週の所定労働時間が通常の労働者と概ね同等の人を指します。短時間のパート・アルバイトは原則として含みません。

なお企業規模の判定は、支給申請の時点の内容で行われます。

早見表:受講料別の実質負担額

条件をそろえて計算した結果です。中小企業・事業展開等リスキリング支援コース・研修時間10時間・1名あたりの金額です。

受講料(税別) 税込 経費助成(75%) 賃金助成 実質負担額
10万円 11万円 8万2,500円 1万円 1万7,500円
15万円 16万5,000円 12万3,700円 1万円 3万1,300円
20万円 22万円 16万5,000円 1万円 4万5,000円
25万円 27万5,000円 20万6,200円 1万円 5万8,800円
30万円 33万円 24万7,500円 1万円 7万2,500円
35万円 38万5,000円 28万8,700円 1万円 8万6,300円
45万円 49万5,000円 30万円(上限) 1万円 18万5,000円

表の最終行に注目してください。経費助成には1人あたりの上限があるため、受講料が税込40万円に達したところで助成額は30万円で頭打ちになります(40万円 × 75% = 30万円がちょうど上限額です)。それより高い研修を選んでも助成額は増えず、超えた分はそのまま自社の負担になります。

45万円の例では、本来なら37万1,250円が助成される計算ですが、上限の30万円までしか出ません。差額の7万円あまりは自己負担です。逆に言えば、税込40万円前後の研修が、助成金の枠を最も効率よく使える価格帯ということになります。受講料が税込40万円を大きく超える研修を比較するときは、この上限を意識してください。

実際に計算してみる

当社(Central AX)の研修を例に、5名で受講した場合を通しで計算します。

生成AI研修を5名で受講する場合

受講料は1人25万円(税別)、研修時間は10時間です。

  1. 研修費用(税込):25万円 × 1.1 × 5名 = 137万5,000円
  2. 経費助成:27万5,000円 × 75% × 5名 = 103万1,250円 → 100円未満切捨てで 103万1,200円
  3. 賃金助成:10時間 × 1,000円 × 5名 = 5万円
  4. 助成金の合計:103万1,200円 + 5万円 = 108万1,200円
  5. 実質負担額:137万5,000円 − 108万1,200円 = 29万3,800円

1人あたりに直すと5万8,760円です。通常の研修費用の約21%で導入できる計算になります。

Claude Code研修を5名で受講する場合

受講料は1人30万円(税別)、研修時間は12時間です。

  1. 研修費用(税込):30万円 × 1.1 × 5名 = 165万円
  2. 経費助成:33万円 × 75% × 5名 = 123万7,500円
  3. 賃金助成:12時間 × 1,000円 × 5名 = 6万円
  4. 助成金の合計:123万7,500円 + 6万円 = 129万7,500円
  5. 実質負担額:165万円 − 129万7,500円 = 35万2,500円

1人あたり7万500円です。

御社の業種・資本金・従業員数・受講人数を入れると、助成金シミュレーターでこの計算をその場で確認できます。企業規模の判定も自動で行います。

よくある間違い5つ

計算の前提を外すと、想定より助成額が下がります。実務でつまずきやすい順に挙げます。

1. 所定労働時間外に研修をする

賃金助成の対象は「所定労働時間内に実施された訓練時間」に限られます(支給要領0508)。「業務が終わってから研修」という設計にすると、賃金助成はゼロになります。休日開催も同様です(所定休日をあらかじめ振り替えた場合を除きます)。

2. eラーニングで受ける

リスキリング支援コースの場合、eラーニング・通信制の経費助成の上限は、訓練時間にかかわらず一律15万円(大企業10万円)です。しかも賃金助成の対象外です。令和8年4月8日の改正で30万円から引き下げられたので、以前の情報のままだと見込みが狂います。

3. 昼休みを挟んだ時間割にする

助成の要件は「実訓練時間数が10時間以上」ですが、この実訓練時間には昼食を伴う休憩時間は含まれません。「5時間×2日」の研修でも、途中に1時間の昼休みが入る設計だと実訓練時間は8時間になり、10時間の要件を満たさず不支給になります。カリキュラム表の書き方が支給可否を分けます。

なお訓練の合間の小休止は実訓練時間に含めてよいものの、1日あたり合計60分までという上限があります。

4. 出席率が8割に届かない

受講者の受講時間が実訓練時間数の8割に満たない場合、その人の分は支給されません。10時間の研修なら8時間以上の出席が必要です。

5. 研修内容が汎用的すぎる

令和8年8月3日の改正で、対象外となる訓練が明確化されました。リーフレットには具体例として、次のように書かれています。

  • 助成対象外:生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練(特定の業務への具体的適用を伴わないため)
  • 助成対象:生成AIを活用して商品提案書の構成案作成、文章生成、修正方法を学ぶ営業担当者向けの訓練(具体的な業務に直結しているため)

また、業務に適した訓練であっても、その業務に従事しない人(例:経理向けの研修を営業担当が受講する)に受けさせる場合は対象外とされています。カリキュラムを受講者の実際の業務に紐づけて設計することが、これまで以上に重要になりました。

計算より先に確認したい期限

金額の見通しが立ったら、次はスケジュールです。助成金には動かせない期限があります。

訓練計画届は、訓練開始日の6か月前から1か月前までに管轄労働局へ提出する必要があります。 1か月を切ってから申し込んだ研修は、どれだけ条件を満たしていても対象になりません。研修会社を選ぶ段階で助成金を使う意思を伝えておくのが確実です。

また、助成金は後払いです。受講料はいったん全額を支払い、研修終了後に支給申請をして、審査を経て入金されます。資金繰りの計画では、この時間差を見ておく必要があります。

申請手続きの流れは人材開発支援助成金で生成AI研修を受ける手順で詳しく解説しています。

よくある質問

Q. 経費助成の計算は税込・税抜どちらですか? A. 税込です。支給要領0501「支給対象経費」に列挙された項目の一つとして「ヘ 消費税」が挙げられており、消費税は支給対象経費に含まれます。対象外の経費を定めた0502に消費税の記載はありません。

Q. 資本金が基準を超えていますが、中小企業として申請できますか? A. はい、従業員数が基準内であれば申請できます。判定は「資本金または従業員数」のいずれかを満たせばよく、両方を満たす必要はありません。

Q. 研修費用が高いほど助成額も増えますか? A. いいえ、上限で頭打ちになります。訓練時間10〜100時間未満の場合、中小企業で1人あたり30万円が経費助成の上限です。税込40万円の研修で上限に達するため、それを超える分は助成の対象になりません。

Q. 1年に何回まで使えますか? A. 同一の従業員につき1年度あたり3回までです。またリスキリング支援コースの場合、そのうちeラーニングによる訓練は1年度1回までに制限されています(令和8年8月3日以降に提出する計画届から)。

Q. いくらもらえるか、すぐに知る方法はありますか? A. あります。助成金シミュレーターに業種・資本金・従業員数・受講人数を入れると、実質負担額の概算がその場で出ます。企業規模の判定も自動で行うので、中小企業に該当するか分からない場合にも使えます。

まとめ

計算の要点を整理します。

  • 助成額は「経費助成 + 賃金助成」の2階建て
  • 経費助成は税込金額を基礎に計算する(支給要領0501で消費税が支給対象経費に含まれるため)
  • 実際の支給額は100円未満切り捨て
  • 中小企業判定は「資本金または従業員数」。片方が基準内なら中小企業
  • IT・情報サービス業はサービス業扱いで、基準が厳しくなる
  • 経費助成には1人あたりの上限があり、税込40万円の研修で上限に達する
  • 賃金助成は所定労働時間内の研修のみが対象

制度の解釈で迷いやすい部分ほど、金額に直結します。実際の支給可否は労働局の審査で決まるため、判断に迷う場合は管轄労働局に確認するのが確実です。

Central AXでは、助成金の対象になる形での研修カリキュラムの設計から、計画届の準備までご相談を承っています。「この研修で助成金が使えるか」「うちは中小企業に当たるのか」といった段階からで構いません。

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